中医協(中央社会保険医療協議会)における診療報酬改定のスケジュールは、2年に1度(偶数年)実施される診療報酬改定に向けて、前年度から段階的に議論・調整・決定されていくのが通例です。つまり2026年の診療報酬改定に向けて、2025年の今から議論はすでに始まっています。

以下にChatGPTを用いて、2026年度診療報酬改定のスケジュールをまとめました。スタートは財政制度分科会の提言で、その提言を受けて中医協で具体的な診療報酬が決定される流れです。

【2026年度診療報酬改定 スケジュール】

時期主な内容想定日程
2025年5月中旬財政制度分科会で初回提言(歳出抑制・構造改革の方向性)2025年5月14日(水)頃
2025年6月下旬中医協で課題整理スタート(前回改定の検証など)2025年6月25日(水)
2025年7月~10月分野別(入院・外来・調剤・在宅など)詳細議論毎週水曜日に定例開催(7月2日~10月29日)
2025年11月上旬各種団体ヒアリング・点数案の骨格議論2025年11月5日(水)以降
2025年12月中旬政府(厚労省・財務省・官邸)で改定率決定(例年「本体+薬価」で決着)2025年12月17日(水)想定
2026年1月8日中医協が改定案(点数素案)を公開・議論2026年1月7日 or 8日
2026年1月20日頃パブリックコメント開始(2週間程度)2026年1月20日〜2月3日頃
2026年2月12日頃中医協「答申」を厚労相に提出 → 正式決定2026年2月12日
2026年2月下旬厚労省が点数表・通知・告示を順次発表~2026年2月28日
2026年3月保険者・レセプトソフト事業者・医療機関が対応準備2026年3月1日〜31日
2026年4月1日診療報酬改定施行・新点数運用開始 2026年4月1日(火)

2025年4月23日に開催された財務省の財政制度等審議会・財政制度分科会での提案に端を発して、「診療報酬1点=8円」が話題になりました。この会議で、財務省は医師の地域偏在是正を目的として、診療報酬の地域別単価制度の導入を提案しました。

具体的には、現行の全国一律「1点=10円」の診療報酬単価を、診療所が過剰な地域では「10-β円」に引き下げ、不足している地域では「10+α円」に引き上げるというものです。

この提案では、具体的な数値として「8円」という金額は示されていませんでしたが、SNS上で「1点=8円」という情報が拡散され、医療関係者の間で大きな議論を呼びました。多くの医師や医療従事者からは、「1点=8円では経営が成り立たない」といった懸念の声が上がっています。

このような地域別単価制度の導入は、医師の地域偏在を是正するための一つの手段として検討されていますが、実際に導入されるかどうかは、今後の議論や検討に委ねられています。

具体的には、財政制度分科会資料の42ページ、43ページにおいて以下のように記載されています。

ここで疑問になるのは、財政制度分科会と中医協の関係です。

財政制度分科会とは?

財政制度分科会は、財務省の審議会の一部であり、国家財政の健全化、社会保障費の抑制、歳出構造改革などを主な議題としています。ここでの議論は、特に診療報酬や介護報酬などの社会保障費に強く関連しています。

  • 所属: 財政制度等審議会(財務省の諮問機関)
  • 役割: 医療・介護・教育など、歳出分野における財政のあり方を提言する

診療報酬との関係性

診療報酬の改定は、基本的に以下の2つのルートを通して決定されます:

項目主体内容
技術的側面の議論中央社会保険医療協議会(中医協/厚労省)点数配分、評価内容、加算要件などを議論する
政策・財政面での判断財政制度分科会(財務省)財政状況に基づいて「診療報酬本体を何%増減させるか」などを提言

つまり、中医協が“点数配分の中身”を議論するのに対して、財政制度分科会は“財政的に増減できるか”という枠組みや方向性を与える立場にあります。

具体的には財政制度分科会の提言が診療報酬に影響を与えた例を見てみましょう。

1. 診療所報酬の地域差導入の提言

財政審は、診療所の経常利益率が2020年度の3.0%から2022年度には8.8%へと急増していることを受け、診療所の報酬単価の引き下げを提言しました。また、地域別に1点当たり単価を設定し、診療所過剰地域から不足地域への医療資源のシフトを促すことも提案されています。

この提言を受け、2024年の診療報酬改定では、生活習慣病関連の報酬について算定要件の厳格化が図られ、管理料や処方箋料が0.25%引き下げられました。また、在宅医療についても報酬の引き下げが行われています。

2. リフィル処方箋の促進と処方箋料の引き下げ

財政審は、リフィル処方箋の普及促進を提言し、処方箋料の時限的引き下げなどの調整措置を講じる必要性を示しました。これにより、リフィル処方箋の活用が進められ、医療費の適正化が図られています。

3. 医療機関の経営情報の見える化と報酬体系の見直し

財政審は、医療機関の「経営情報データベース」において、職種別の給与・人数の提出を義務化すべきと提案しました。また、診療報酬の加算の算定に当たって職種別給与等の提出を要件化することも提言されています。これにより、医療機関の経営情報の透明性が向上し、報酬体系の見直しが進められています。

4. 後発医薬品の使用促進

財政審は、医療費の適正化を図るため、後発医薬品の使用促進を提言しました。これにより、後発医薬品の使用割合が診療報酬の加算要件として設定され、医療機関における後発医薬品の使用が促進されています。

財政審の提言を中医協が採用しなかった例も

財政制度等審議会(財政審)が過去に提言したものの、実際の診療報酬改定において採用されなかった主な事例は以下のとおりです。


1. 診療報酬単価の地域別設定(「1点=8円」案)

  • 提言内容:診療所が過剰な地域では診療報酬の1点単価を引き下げ、不足している地域では引き上げる「地域別診療報酬単価制度」の導入。
  • 背景:医師の地域偏在を是正するため、経済的インセンティブを活用して医師の配置を調整する狙いがありました。
  • 結果:医療現場からの強い反発や、地域医療への影響を懸念する声が多く、2024年度の診療報酬改定では導入が見送られました。

2. 特定診療科における診療報酬の減算措置

  • 提言内容:特定の診療科で医療サービスが過剰な地域において、アウトカム評価の低い医療機関に対して診療報酬を減算する措置の導入。
  • 背景:医師の診療科間の偏在を是正し、医療資源の適正配置を促進する目的がありました。
  • 結果:診療科ごとの医療ニーズの違いや、評価指標の設定の難しさなどから、具体的な制度化には至っていません。

3. 保険医療機関の指定に対する規制強化

  • 提言内容:医師が過剰な地域において、新たな保険医療機関の指定を制限するなど、保険医の指定権限を活用した医師偏在対策の強化。
  • 背景:医師の自由開業制のもとでの地域偏在を是正するため、制度的な制約を設ける提案でした。
  • 結果:医師の開業の自由を制限することへの懸念や、地域医療への影響を考慮し、具体的な制度改正には至っていません。

これらの提言は、医療費の適正化や医師の偏在是正を目的として財政審から提出されたものですが、医療現場の実情や患者への影響を考慮し、慎重な対応が求められた結果、実現には至っていません。

今後も、医療提供体制の改革に向けた議論が続けられる中で、これらの提案が再び検討される可能性もあります。

以上のように財政審が医療に対して厳しめの提言を行い、中医協がそれを跳ね返すという流れがたびたびみられます。

これは医療費を削減し国の財政健全化をはかりたい財務省と医療機関を守りたい厚労省の戦いとも言えます。

2025年も2026年の改定に向けて、財政審、中医協と場を変えながら熱い戦いが続きそうです。