ネガティブなクチコミが集中しやすい受付対応

受付は診察を除くとネガティブなクチコミが最も多く寄せられる分野です。「診療終了間際に来院したのに受付の人がもう診察できないの一点張りだった」や「来院前に簡単な質問を電話でしたところひどい対応だった」など基本的な接遇ができていないケースが大半です。

医師の診察は高評価でも受付対応のまずさが原因で二度と来院しないというクチコミも多く見受けられます。つまり見方を変えれば受付が基本的な接遇を行えば、クリニックの評価も大きく上がり再来院へ結びつくということになります。

受付の接遇が再来院の患者を増やす鍵

患者さんの課題を解決してあげることが受付の役割

患者さんが受付に求めるものは自分の課題を解決してくれるかどうかです。例として、整形外科を標榜するクリニックに間違って風邪の患者さんが来院してしまった際の受付対応を表にしました(図表1)。患者さんとしては風邪の治療を受けられれば良いのですからレベル3までいくと課題が十分解決されて満足、レベル4までいくと感動してもらえます。

図表1:受付の対応力とはいかに患者さんの課題を解決してあげれるか
▼整形外科に風邪の患者が来院した際の受付の対応例

レベル1 風邪の方は診れませんのでお帰りください。
レベル2 風邪の方は内科を探しておかかりください。
レベル3 近くに○○内科がありますのでそちらはどうでしょうか?
レベル4 近くの○○内科がありますので、電話して診察可能か確認しましょうか?

レベル4までいけば、いつかケガなどをした際に必ず選んでもらえるでしょうし、このエピソードがクチコミで広まって他の患者さんの来院に繋がるかもしれません。ちなみに実際はレベル1の受付対応も多いですが、これはあくまで当院の主張をしているだけで、患者さんの課題の解決にはなっていません。

採用が最も大切。医療事務の教育はできても人間力の教育は難しい

では、レベル3、レベル4の対応ができる受付を目指すにはどうしたらよいのでしょうか?これに関しては採用に尽きるといっても過言ではありません。そして採用は医療事務の能力よりも人間力にフォーカスするべきです。なぜなら医療事務の能力はそれなりの教育体制を取れるクリニックであれば後からでも身に着けることが可能ですが、患者さんの意向をくみ取って適切な対処ができる人間力を教育で身に着けさせるのはかなり大変だからです。

医療事務の能力を重視し過ぎると、医療事務のプロフェッショナルという意識の方が入職してきます。このような方の中には、自分はあくまで医療事務の専門家であり、受付は雑務の一つと捉えて患者さんへの対応がおざなりになるケースがあります。ところが、実際には、クリニックにおいてはそれほど高度な医療事務は必要がなく、むしろ患者対応の方がクリニックの評判を左右する重要なものであることの方が多いのです。

そして、一度、入職してしまうと通常、医師は診察室にいるため受付の対応はチェックできません。そのため地域の評判やクチコミサイトでの投稿を見て初めて受付に問題があることを知るケースが多いのです。

そのため採用の段階から人間力をベースに進める必要があるのです。一般的にクリニックの医療事務は人気のでる仕事ですから、医療事務能力を重視せずに根気よく募集を行えば、人間力のある良い人は必ず応募してきます。そしてそういう方は教育せずとも自然と患者さんの意向をくみ取れますし、院内の雰囲気も明るく楽しいものになってきます。

また、そういった方は自分が役立てることを積極的に行っていこうとしますので、受付、医療事務をマスターすると簡単なトリアージまで行ってくれるようになる方も出てきます。ここまでいくと受付はクリニックの戦力といえるようになると思います。ぜひ受付に着目してみて欲しいです。

受付はクリニックの戦力