クリニック経営マガジン

第1回:患者さんにとってわかりやすい診療所になろう!

第1回:患者さんにとってわかりやすい診療所になろう!

患者目線の医療サービスの追求を掲げる医療機関は多いですが、実際にそれを行うにはどのようにしたらよいのでしょうか?それには患者さんのことを知ることが第一歩です。具体的には、どのように診療所を見つけ、どのようなポイントを評価し来院に繋がり、診察を通して何を感じてリピーターになるのかを知ることです。

また患者目線の医療サービスの追求はただのお題目ではなく、今後の診療所経営を左右する大変重要なものだと思われます。なぜなら、我が国の国民皆保険かつフリーアクセスという世界でも珍しい医療制度は患者さんが診療所を自由に選ぶことができる、診療所の立場に立つと常に患者さんからの選別の目にさらされる厳しい制度だからです。

月間700万人の訪問者を誇る日本最大級の病院口コミ検索サイトCaloo(カルー)を運営するカルー株式会社では、10万件を超す口コミやユーザーの行動を分析することで患者がどのように新しい診療所を知り、来院し、リピーターとなるのかを調査してきました。

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今回はその調査結果や近年の患者の医療機関選びの動向などを踏まえて、患者さんから選ばれるかかりつけ医になるためのポイントを6つにまとめました。1つ目は患者さんにとってわかりやすい診療所になること、2つ目はホームページ対策を院長自らが真剣に取り組むこと、3つ目はクチコミサイトを敬遠せずに上手に付き合っていくこと、4つ目は待合室と待ち時間を有効に使い診療所のファンになってもらう場にすること、5つ目はネガティブなクチコミで最も多い受付の対策を行うこと、6つ目は地域に溶け込み地域に選ばれる診療所になることです。

患者さんにとって診療所はわかりにくい存在!

第1回目の今回は、「患者さんにとってわかりやすい診療所になること」について解説をしていきたいと思います。まず患者さんも診療所選びに困っているという事実があります(表1)。実に72.5%の患者さんが病院選び・医師選びは難しいと思うと回答しています。つまり患者さんにとって診療所はわかりにくい存在なのです。

表1:メディケア生命 病院選び・医者選びに関する調査 2014年
有効サンプル数 1年以内に通院経験のある20~59歳の男女1,000名

ではなぜ診療所は患者さんにとってわかりにくいのでしょうか?それは突き詰めれば情報の不足につきます。私たちは診療所に対する情報が不足する原因は主に2つあると考えています。1つ目は診療所側が患者さんにわかりやすく伝える工夫が足りてない点です。どんな医療を提供している診療所かを診療所名、立地、院内掲示、診察方法、ホームページ、広告などを一貫して患者さんに示していく必要があります。2つ目は厚生労働省の定める医療広告ガイドラインです。

医療広告ガイドラインは、不適切な情報が広まらないという利点がもちろんあるのですが、その副作用として患者さんの知りたい情報の拡散も阻害してしまっている面もあります。具体的には患者さんが知りたい先生の得意分野、人柄、受診された患者さんの声などを広告という形で伝えることは難しくなっています。

患者さんにとってわかりやすい診療所になるには?

では医療広告ガイドラインを遵守した上で、患者さんにわかりやすく診療所を伝えるにはどうしたらよいでしょうか?

私たちがもっとも大切だと考えるのは、先生がどのような患者さんにどのような医療を提供したいかという想いです。この想いは理念やビジョンと言い換えても良いと思います。そして、その想いを明確化することが患者さんにとってわかりやすい診療所になるための第一歩です。想いが明確化できれば、その次は、診療所に関わるすべてのものに反映させます。これには工夫が必要で、想いが明確化されていてもこの工夫が足りてない診療所が多い印象があります。

例えば渋谷駅周辺に勤務する女性にオフィスでの体調不良の際に気軽に来院できるような医療を提供したいという想いを持った女性医師がいたとします。その場合の立地はどこでしょうか?当然渋谷駅周辺です。それでは診療所名はどうしたらよいでしょうか?渋谷駅前にあって女性医師が診察する内科であることが伝われば女性患者さんにとってわかりやすいでしょう。そうであれば、「ケイコ渋谷駅前内科」のようなネーミングが良いでしょう。このように先生の想いを立地、診療所名、院内、診察方法、導入する医療機器、受付、ホームページ、看板、広告に一気通貫に工夫して反映させることで初めて患者さんにとってわかりやすい診療所となるのです。

次回以降は具体的にどのような工夫をしていけばよいかを述べていきたいと思います。

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